『恋か破壊か』
『恋か破壊か』
作者:糸井のぞ
出版社/発売年:プランタン出版/2019
媒体:漫画
◇あらすじ(HP*1より引用)◇
ぼくは、恋人を壊すことにした。
破壊衝動に悩む高校生×ゲイで年上の文具屋店主
高校生の北林掌には悩みがあった。
それは、幼少期から自分の中に眠る
何かを壊したいという突発的な”破壊衝動”。
そんな自分を恐れ、このままでは
人生を台無しにしてしまうと思った掌は、
一度だけその願望を満たすことに。
そんな時、偶然入った町の古びた文具屋。
年上で物腰の柔らかい店主の蛍二郎に出会い、掌は決意する。
「――こいつにしよう」と。
◇作品キーワード◇
性描写淡/同意なし
ほのぼの/シリアス
成人未成年/生徒/社会人/10代×30代/年の差/黒髪ショート/茶髪ミディアム
以下ネタバレを含みます
◆◆◆
幼いころから破壊衝動を抱えた男子高校生が次に破壊するものとして人を選ぶという導入から始まる少し特殊な設定の作品です。成人と未成年、暴力、同意なしの描写あり。倫理観の面で一部2人に忠告をする大人は出てきますが、少々粗い印象はあるかもしれません。
表向きは丁寧に心通わせているその水面下で進む暗い思惑を読者は分かっているという構成が面白いです。
子供故の無知で乱暴な部分を大人だからこそ最初は理解できずにいる蛍二郎の感情的な言葉使いがとても印象的でした。漫画というよりは小説を読んでいるときに近い感覚で読みました。恋愛の甘さや恋の駆け引きというよりも、心理描写重めの作品が好みの方にオススメです。
表紙と煽り文の不穏さからイメージするような暗さ、重さはそこまでありません。殺人衝動というよりは家庭環境や思春期特有の不安定さの方に比重が置かれているのと、イラストの繊細さがそう思わせるのかもしれないです。フィクションならではの不穏を美しく昇華させている作品です。美しいものばかりが良いものというわけではないですが、物語の中でぐらいは救いがあってもいいのではないかと個人的には思います。